これからの歩み

翌週、今日は姉達と日帰りで温泉観光地へ。温泉入ってお土産を買った。四時頃帰る予定。俊さんは朝から会議で夜は懇親会でお夕飯がいらないので、姉達と出掛ける事にした。

四人揃って出かけるのは久しぶり。十時に待ち合わせして、出発だー。

美味しいお昼、散歩してお茶しておしゃべりたくさんしてそろそろお土産買いに行こうと席を立った。俊さんの好きな赤かぶの漬物、ザラメ煎餅とたくさん買った。そろそろ帰る時間。駅に向かった。

三時の電車に乗って三人一緒に降りた。

「又、来週ね」

一人で、外を見ていると、

「あの、すみません少しいいですか」と。

変な人が声をかけてきた。

謎の人編

ある日の午後、社員旅行の解散後、市場調査で観光地を秘書と一緒に視察に来ていて、カフェでお茶を飲んでいた。四人の女性連れが前を通り過ぎようとした時、

「えぇ!」

十年前に亡くなった妻にそっくりな女性が目に入った。びっくりしたが空似だろうと思い秘書と色々な情報をまとめていると、先ほどの女性四人連れがお土産を買っての帰りだろう、荷物を持って通った。秘書に、

「悪いが急用が出来たから先に帰ってくれ。月曜日な」と急ぎ店を出た。しばらくすると、四人の女性を見つけた。後ろからゆっくり追った。妻に似た女性を見ていたら笑い方、優しそうな顔、仕草、妻よりは若いが癒されそうな雰囲気、清楚な服装、もち肌そうな体つき、僕は導かれるように後を追った。

「よく笑う人だ。なんて、優しそうに笑うんだ。楽しそうだな。顔に性格が出ているなぁ」

ますますドキドキしてしまって目が離せない。声をかけたい、でも不審がられるだろうな。相当迷っている。目が離せない。顔が赤くなっているのが自分でも分かった。

「えっ、一目ぼれ!」

五十五歳、初めての経験、いや、妻を含めて二回目。一時間、追い続けた。帰るために、駅に向かっているのだろう。

今、声をかけなければ後悔すると思うが……出来ない。一緒に電車に乗り込む。

まるでストーカーのようだ。お連れの三人が下りたので、勇気を出して、

「あの、すみません少しいいですか」。

「はい?」

近くで見るとやはり素敵な女性だ。

「僕、山本と言います」と名刺を出す。

「いいえ、名刺はいりません。結婚しています。主人以外の男性には興味がありません」

初めて名刺を拒否された。意外と名の売れた会社の代表だ。初めてだった。

諦めきれずに、

「本当に結婚しているか確認したい」

僕は何を言っているんだろうか、女性は驚いている。

「初めてなんです。女性に声かけるのは。いや、妻を入れると二回目です。諦めるにしても、ご主人に会わせてください」

「なんですか、私があなたに迷惑を掛けたのですか」

「違います。すみません。僕があなたに一目ぼれしたのです。諦めるにしても是非、会わせてください」

女性は不安そうにご主人にメールをしている。

もしダメそうな男性だったら奪い取りたい。

ダメ夫でありますように、女性が降りる準備をしている。