家出

4月28日、夕方仕事を終え会社を出て、一人になる。帰れない、帰りたいけど、帰れない。何も考えずに空を見る、途方に暮れるって曲では聞いたことがあるフレーズだが、リアルに体験するとは。しかもこの年齢で。トシカツはとりあえず、会社の近くの、24時間営業のスーパーの駐車場に車を停め、どうしようか考える。

あまりにも急激な変化に思考回路が追い付かないというか、この現状さえわからない。何をしているのだ? どこにいるのだ? 自分の居場所がグーグルマップにも載っていない。町の中のポツンと一軒家ならず一軒車。なら車中泊? だよな? そうなるととりあえずビールなのかな? 

ここは、24時間営業のスーパーの駐車場。それならとスーパーで適当につまみとビールを買ってきて、車に乗る。缶ビールのプルタブを引く。プシュと音を立て、ゴクゴクゴクと喉を鳴らせて呑んだ。

人間って精神的に追い込まれると防衛反応として逃げ道を探す。となるとやっぱりお酒なのかな? 身体的に呑めない人もいるから一概には言えないけど、トシカツにとってアルコールは、詰んだ気持ちを和らげる精神安定剤なのだ。なんて、言い訳しながら呑んでいる。

とはいえ、トシカツはやっと一息つく。ビールを2本3本と呑んでいくと、何だかどうでもいいやと開き直ってくる。いつも場当たり的でその場しのぎ。大丈夫か? トシカツ。あなたの乗ったジェットコースターはもっともっと深い所、地獄のような真っ暗な所まで行くのだぞ。そんな不安もよそにトシカツはビール片手に、4月の終わりの春の優しい風の中、葉桜を見ながらこれからどうなるのだろうなんて思いながら夜は更けていった。

って、他人事かよ! トシカツはすぐ逃げたがる。