違和感

年も明け、お正月を過ぎた頃から少しずつ夫婦の関係が軋み始める。会話が少なくなりトシカツは享子に無視され始める。相変わらずの「すれ違い」の生活だから、そんなに顕著には気付かない程度なのだが、トシカツは何か違う空気を感じる。

「違和感?」「女の勘的なもの?」いや男にも勘はなくても感はある。というか、そういう面では男の方が鋭いのかもしれないと思う時がある。多分、男でも女でも惚れている方が相手の言葉や動き、一挙手一投足を自然と見ているから、何かいつもと違うとか、空気の違いをビリビリと感じる。

それでも女の人の思考の方が一枚も二枚も上手だから、男の勘なんてあてにならないと抹消されるのだろう。そんな中、笑い声と共に、享子と娘の会話が耳に入ってくる。

「ママ最近、モテ期が来たかも」

などと聞こえてくる。

ん?

トシカツの心がザワザワしだした。何やら享子の勤めるスーパーの向かいのラーメン屋の若い男の店員から

「小川さん綺麗ですね、握手してください」

とか言われたらしい。確かに女の人にしてみれば嬉しいだろうし、言われたら娘にでも自慢話したくなるだろう。そんな浮かれた空気がトシカツには伝わる。心がザワザワし始める。トシカツは人一倍、嫉妬深い男である。