静かな山で──
山々は青白い霧の中で静かに待つ 日は空をガランス色に染めて落ちる
遠き山へ、あこがれの届かぬ彼方へ 果たせぬ夢と現実のシルエットを浮かび上がらせて
日は一瞬最後のまたたきをして 山の端に隠れた、
空は赤みを増した静寂、華麗、神秘、永劫、
そしてこの一瞬山の黄昏はいつものようにひっそりと暮れて行く
見返れば淡いバイオレットブルーの空に 青白い光を放って月が浮かんでいる
街の光の上に、あの女ひとの住む街の上に
春の近づく山は冬の名残
色濃く残る雪が夕闇の中に黒く汚れて ぼんやりと浮かび上がっていた