「……って最近思うんよ〜」
晩御飯を食べた後、昨今考えている悩みを電話で相談する。
電話口の先には、同郷のご近所さんで幼稚園の頃からの幼馴染の「白井光(しらいひかる)」。彼女は都内の大学に通っている。
都内に越して来てからお互いの自宅を行き来したり、一緒に都内観光スポットへ出かけたりしていたが、ここ1年は電話のみで会いたくても会えずにいる。
「わかるわぁ。私も大会中止になって体力持て余しているし、授業はリモートだし、同級生からも似たような悩み聞くし。みんな心労溜まっているみたいだったわ」
「光ちゃんはどうやってストレス解消してるの〜?」
「そうだな、私は筋トレとランニングでだいたいのストレス発散はできてるな」
「すごいたくましいね〜、昔からスポーツ得意だったもんね〜」
陸上部の推薦で大学に受かっただけはある。
「でもたまには嶺の部屋のマンガを読みに行きたいねぇ……迷宮でメシ食う漫画の続き買った?」
「うん、あるよ〜」
「おっ、流石! またお土産持って行くよ……自粛解除になったらな」
「うん……」
感染予防の自粛解除がいつになるのか、医療機関や個人の努力を感じるが、誰にもわからない。
「あとは20歳記念飲み会もしたいしな!」
「したいね〜」
「それに暇ならなんか資格とか取れば?」
「え……資格とか……。わたしが勉強嫌いって知っていて言っているでしょ〜」
「サア? ナンノコトデショウネー」
おどけて話す光に思わず笑いが込み上げる。
元々勉強嫌いで高校の頃はテスト2日前まで漫画を読み耽り、前日に教科書丸暗記の一夜漬けでテストを乗り切っていた。
もちろん、そんな勉強法では成績は芳しくもなく。
幼馴染に一緒の大学に誘われるも悩んだ末に断り、高卒で都内に就職して今に至る。