しかし、家族が遠方に住んでおり、高齢者の認知症の状態をまったく把握していない、または軽く考えていたりすると、対応がなかなか進まないことがあります。また、高齢者本人も病識がなく、病院受診や介護認定の申請などを受け入れてくれない場合があります。

独居の方は、特にその傾向が強く見られます。「どこも悪くないから」「病院は嫌いだから」などと、もっともらしい理由を言って、受診を避けようとします。本人の合意がなければ無理に診察や検査はできないので、何とか説得を試みます。

うまく説得できて私たちのクリニックに連れてきてもらえば、詳細な問診、一般的な診察と血液検査、そして長谷川式認知症スケールなどの認知症の検査をします。その結果によって、薬での治療を検討したり、介護認定を申請したり、どの程度のケアが必要か相談します。

最近、90代の高齢者で、デイサービスを無事導入できた方がいます。それまでは家に閉じこもっていたのですが、幸い私のすすめを素直に聞き、介護サービスを受け入れてくれました。そして、デイサービスに通い始めると、次第に表情や態度も明るくなり、それまで見られていた被害妄想や体調不良の訴えなどもかなり少なくなりました。

今後も独居の高齢者が増え、地域で認知症の方々に対応していかなければならない事例が増えてくると思われます。ご家族や近隣の住民の方が地域の役所や包括支援センターに相談し、高齢者の意向も尊重しながら一緒に対応していくのが良いと思います。