■目がおかしいよ!
三年後の昭和五十一年秋、次男を身ごもりました。六カ月に入った頃、「頸管無力症」と診断されました。「このままでは流産します。頸管を縛る手術が必要です」と言われ、入院して手術を経ての出産となりました。
生まれて少したった頃、目の動きが変だと気づきました。おんぶして、大きな病院などあちこちの病院に通いましたが、治療方法がわかりませんでした。
その子の妊娠二カ月の頃、何十年ぶりという「風疹」の流行(今も大流行とのこと)がありました。私も軽い風邪のような症状がありましたので、報じられている風疹のことが気になりましたが、既に両親もなく、子供の頃に風疹に罹り免疫があるかわかりません。
次男の目の動きがおかしいことを、「俺の家系にはそんな者はいない」と言って、お酒を飲んでは私を責めます。どうしようもないことで責められるのです。
また、保育園でのこと。皆、小さな子供たちなので仕方がないことです。「目がおかしいよ」と、園児たちにからかわれましたが、次男はまだ幼いですから、意識していなかったのでしょう。
彼も私も悩みました。小学校入学前に、小児眼科でとても権威のある大学病院の教授の手術を受けられました。お陰様で表面上は目の異常と言える症状はなくなりました。
この子の目の手術の時、主治医は、「全身麻酔は小さい子ですからできるだけ避けたいですね。物わかりがよさそうです。回復も早いですから局部麻酔でやりましょう」と言われ、局部麻酔の処置をして、健気に一人で手術台に向かう次男の後ろ姿を見て、心の中で必死に無事を祈るのでした。
この時に次男は何を感じていたのか、私には知る由もありません。「目の手術を受けた」ことが、高校卒業時の進路選択において影響していたのかもしれないと、後日知ることになったのです。母でありながら、子供の心模様に気づかなかったのです。