ふざけんな

義母の四十九日の法要が終わって二週間ほど過ぎた七月の中旬、その日も朝帰りをした孝雄に、改めて浮気のことを聞いてみる。

「晴香さんとは、まだ続いてるの?」

「関係ないです」

「じゃあ、ほかに女の人がいるの?」

「いるわけがないだろう! 俺がそんなに信用できひんのか!」

でも……お義母さんが亡くなったあの日、朝に連絡が取れなくて会社に電話したら、終日外出予定で戻らないって言われたけど、その日も帰るのは翌朝になるってメールがきていて……どこに泊まるつもりだったの?

それから、お葬式が終わった夜も。仲間にお礼を言いに行くって言ってたけど……お葬式があった当日に、お礼を言いに来た喪主を朝まで引き留めるなんてことある?

(絶対おかしい!)

七月二十三日(土)

お昼の十二時頃、孝雄がシャワーを浴びていたので、その隙に携帯電話をチェックしてみると……晴香さんにメールを送信していた! しかも、ついさっき!

〈どうしても、たーとじゃダメなのか? たーは晴香がいないとダメなのに〉

と、もう一人! 心菜(ここな)さんという人にも。

〈明日は、東京で会議だから夜になるけど会いたい。金はその時でいいだろ〉

そしてまた晴香さんにメールを……。

〈晴香の気持ちは痛いほどわかる。ずっとホテル住まいにして悪いことをしたと思っている。だけど部屋に住めば、晴香が思ってる通りのことができるよ。住み方は、今すぐに変えられるよ。でも、たーの晴香への気持ちは、絶対どんなことがあっても変えられないから♥〉
               ◇

〈変わらないといけないことは、すごくよくわかってる。たーへの気持ちが変わっていないのなら、すぐに踏み出そうよ。たーが必要ないのなら捨てて行けばいい。今だって死ぬほど苦しいから、そうすればいいよ〉

               ◇

〈これから会おう、気分を変えて違うホテルで。×駅から徒歩五分の……〉

(――なんか晴香さんには、愛想をつかされかけているようやな……)

そしてふたたび心菜さんに……。

〈△駅近くのホテルを予約しよう〉

               *

午後二時頃、孝雄を最寄り駅へ送る。今日は晴香さんで、明日は心菜さん……。すべてをわかっていながら、「出張だ」と不機嫌そうに言い張る孝雄を駅まで送り届ける。私は何をやっているんだろうと思いながら……。

あんまりモヤモヤしていたので、家に戻ってから孝雄にメールを。

〈忙しいところすみません。さっき出かける時、何か腹を立てているようでしたが……私はこのまま、あなたの奥さんでいて構わないのですか? 鈍感ですみません。ちょっと気になったので……〉

それで返ってきたメールがこれだ。

〈しょっちゅう怒ったり、機嫌悪かったりしてごめんなさい。もっと話し合って仲良く暮らしたいといつも考えています。なかなかうまくいかなくて辛いです。夫婦というのは、信頼し合って過ごしていくことが一番大切だと思います。信頼を裏切らないように生きようと決めています。別れることなんか考えてもいないし、どんなことがあっても、景子と一生頑張っていこうと思っています。夫婦だから、それは当たり前のことだと思います。心労をかけてごめんなさい〉