いつもの様に小さいケンカはしつつ季節は過ぎた。繰り返される日常の中、ある日ダンナが言った。

「ちょっと体調悪くて受診したら肝臓の数値が高くて来週から入院になった」

とのこと。

「仕事休めるかなー」

という私に、

「大丈夫、1人でバイクで行くけん」

とダンナ。

いくら頭の中に熟年離婚がチラつく鬼嫁でも結婚して35年、愛なんてとっくの昔に行方不明になっていたが「情」はある。半日休みをもらい付き添うことにした。

翌朝、全身に黄疸が出たダンナと、半休もらってよかったーとホッとした私がいた。

主治医から1ヵ月程の入院の説明を受け帰る私をエレベーター前まで送ってくれるダンナに、オイオイあなた病人ですよね! とつっこみを入れる私。入院が決まってから断酒したダンナはこんな時でも優しかった。お酒を呑みすぎなければ、ほぼケンカもしない夫婦仲なのだ。

「あー明日からご飯の心配もイラつくこともなく幸せだー」とちょっと浮かれた私がいた。

しかしコロナ禍である。面会禁止。何かあったらこちらから連絡しますと。何かあったら……ってどういう事? と引っかかりはしたが、スマホがある! それだけが頼りだったが、なぜか返信が来なくなる。

「なんだ?」「大丈夫?」想像だけが膨らむ。さすがに10日程で病院に連絡、どうにか主治医とダンナに会えることになった。

診察室で久しぶりに会ったダンナは、断酒と栄養管理された食事のお陰で、スイカの様なお腹も減っていたが「ラーメンも食べれん」と不満を言って私からつつかれた。

顔が見れて話せて安心した私の気持ちとは裏腹に、病室へ戻る姿のダンナは、ヨタヨタとまるでじいさんみたいで私を一気に不安にさせた。